版画家&ジュエリーアーティストSatico ONOが、
作品、アート、音楽などについてノンビリ綴ります。
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「とにかく、好き」が原動力
 これ、絶対観に行こう。と久しぶりに思った映画。
「ビル・カニンガム&ニューヨーク」



ニューヨーク・タイムズ紙でファッションコラムON THE STREET」を長年連載している、84歳の写真家ビル・カニンガムさんを追ったドキュメンタリーです。

トレードマークの青い上着を着て、自転車でマンハッタンを駆け回り、
昼間はストリートで、夜はパーティ会場で、これは!と思ったファッションを撮影。
ファッションが面白ければ撮る(セレブだから撮るということは、ない)。


撮り終わったらニューヨーク・タイムズの編集部で、
写真選びと紙面のレイアウト(オペレーターに毒っけたっぷりの冗談を言いながら)。
とても84歳とは思えないほどの情熱で、
日々ファッションを追いかけているビル。

笑顔が素敵でユーモアがあって、とにかくチャーミングな人。
ファッションについて語る時、目が子供みたいにキラキラと輝く。
お爺さんの顔に少年の瞳が付いててなんだか不思議。
フランスで勲章をもらうぐらいすごい人なのに全然偉ぶらない。
質素な生活をし、ただただ好きなファッションを頑固に誠実に追い求めている。

自分の好きなことをして生きたいって思っても、なかなか簡単にはいかない世の中。
余計なものを削ぎ落としシンプルに生きているビルを眩しく感じました。


ビルにまつわる人々のインタビューが秀逸。







ユニークでカラフルで、それぞれにドキュメンタリーが一本撮れそうなキャラの皆さま。
ドラッグクイーンがビルについて語ったときは思わず涙がこぼれました。


ニューヨークにもファッションにも写真にも興味無くても
(興味ある人はもちろん)ぜひ観て欲しい!

初心を思い出させてくれる映画です。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

純粋に好きなものを追い求めているといえば、この2人も素晴らしい。
「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」


ごく普通の市民であるハーブとドロシー夫妻が、
40年にわたってコレクションした莫大な数のアートを、
全米50州の各美術館に50点ずつ寄贈するプロジェクトを記録したドキュメンタリー。

(ん?最近、老人が主役のドキュメンタリーばっかり観てる??)
ユーモアの効用
ドキュメンタリーって面白いです。

世界の様々な問題を扱ったドキュメンタリーを、
週ごとあるいは月ごとにシリーズで取り上げている
NHKのBS1放映の「BS世界のドキュメンタリー」は、
特にお気に入り(オススメ)です。

興味深いテーマが多く「そうなんだぁ〜勉強なるなぁ〜」と、
夜中、唸りながら見ています。
が、しかし!
朝起きると要点をすっかり忘れていたりするんですけどね・・・


先日「エンディングノート」を観ました。
こちらドキュメンタリー映画です。


この映画の監督である砂田麻美さんのお父さん、砂田知昭さんが主人公。
定年退職をむかえ、これから第2の人生という矢先に、
ガン(それもステージ4)が発見されます。
お父さんの最期までの日々と家族を、娘が記録した作品、、、

と、あらすじだけだと、ひたすら悲しい映画のように感じますが、
そうではありませんでした。

とにかくお父さんがチャーミング♪
いたずらっこみたいな笑顔がとてもよくて、
いつもクスッとするようなことをしようと考えてる人。
お父さんの病状の悪化を目の前にして、家族が重い空気が包まれる中、
一番辛いであろうお父さんのユーモアでまわりが救われるシーンは、
思わず泣き笑いしてしまいました。

そのユーモアのセンスは監督である娘さんにもきちんと受け継がれてます。
父の死という重いテーマでありながら、
お父さんや家族の過去の映像がテンポよく挿入されて、
明るい雰囲気の、ドキュメンタリーとしても厚みのある作品になっています。


私も作品を作るときに「ちょっぴりのユーモア」を大切にしているところがあります。
美しい作品とか、すごい技術の作品とか、見たことのない作品とかよりも、
「思わず微笑んでしまう作品」のほうが、
スッと心に届くことがあるのではないかなと。

そんなことを考えながら「エンディングノート」を観ました。
おススメです♪











アルデンテ 1枚
映画館でチケット買う時に、照れてしまうことありませんか?

「ハリーポッター」とか「スターウォーズ」とか、
「クレヨンしんちゃん」は簡単ですね。
メジャーでわかりやすいし、簡潔でよろしい。

では、「ボーン・アルティメイタム」はいかがでしょうか。
私はちょっと恥ずかしいですね。
だって「あるてぃめいたむって何?どーいう意味??」と
頭ではグルグルしているのに、シレッとしている自分がおもしろくなって、
噛みかみになったりします。

マイケルジャクソンのドキュメンタリー「THIS IS IT」を、
しつこく映画館で観ていた時期に(結局7回ぐらい観たような)、
「ディスィズィッ 1枚お願いします。」
とやたらいい発音で注文して(映画の中でマイケルがそういう風に言うのです)、
チケットカウンターのお姉さんが「は?」って感じになってましたよ。アハハ。


長めのタイトルを窓口で全部言うのにも
ちょっと照れることあります。

「あしたのパスタはアルデンテ 1枚お願いします」

これはもう
「アルデンテ 1枚」でしょう。


前置き長くなりました。
あしたのパスタはアルデンテ
観てきました。イタリア映画です。



ストーリーは、ゲイであることを隠していた青年が、
パスタ会社を経営する保守的な家族にカミングアウトしようとしていたら、
実は兄もゲイで一足先にカミングアウトされてしまい、家族が大騒ぎ。
イタリアンヒューマンコメディとでもいいましょうか。

予告編から受ける印象は、ワハハと笑えるコメディー映画って感じでしたが、
全編観るともう少し入り組んでます。
冒頭が主人公のおばあちゃんの若いころの回想シーンで、
ウェディングドレス着てピストル自殺しようとしてたりして、
観るほうは、これはちょっと雰囲気違うかもってことになります。

ゲイに対する偏見を強く持つ両親を前に、
カミングアウトできない主人公。
カミングアウトしたことで勘当された兄。
主人公に淡い想いを抱く、一見型破りで現代的な、でも繊細な女性。
自分の思うままに生きなさいと、静かにメッセージを送る祖母。

色々とメッセージが多いわりには、それぞれのキャラクターの掘り下げ方が甘く、
やや消化不良。
いわゆるゲイネタ(オネエ言葉や仕草)で、面白おかしく笑わせたかと思えば、
主人公の仏頂面のアップ。おばあちゃんの思わせぶりな回想シーン再び。
うう〜ん。もう少し言いたいことを絞って欲しい〜。

「あしたのパスタはアルデンテ」というタイトルは、
「あしたはもっといいことあるよ」という感じかしら。
オリジナルタイトルは「Mine Vaganti」。
浮遊機雷という意味だそうです。
こちらはなかなか難解・・・。

テーマは面白いので、もっと魅力的に撮れたはず!と思うなんだか惜しい映画。
でもイタリアの景色がきれいで目が喜びました♪